特集 食と栄養の可能性を探る
治療—栄養—看護:食をめぐる三位一体のはたらきかけをすすめるために
中村 丁次
1
1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
pp.10-15
発行日 1999年1月1日
Published Date 1999/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905743
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医療と食事
ヒトは,自分たちが生存する環境のなかで,食べることに適する動物,植物を食物として選択し食事を営んできた.食べることに適するものとは,喫食することにより消化器症状や神経症状を起こしたり,死にいたるような毒性がなく,嗜好的にも満足でき,しかも栄養素の補給に有効なものである.特に,ヒトの場合,他動物のように捕獲した物をそのまま食べるのではなく,調理や加工,さらに栽培や飼育を始めたために,ヒトが生存する場や時代に影響された特有の食事を発達させたのである.
一方,ヒトは古くから病気と食事との関係を議論し,古い医術の大部分は食事療法が占めていたといっても過言ではない1)生活のなかでタブーや食べ合わせで病気を防いだり,病気の時は食養生として活用していた.しかし,これらはいずれも摂食経験から見いだされた内容が伝承されただけであり,客観性や普遍性には乏しいものであった.そしてその問題点を解決し両者の関係をより確実にしたのが栄養学である.
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