特別記事
東京大学医学部付属病院総合腫瘍病棟のめざす医療
青木 幸昌
1
,
中川 恵一
1
,
佐々木 康人
1
,
米村 紀子
2
1東京大学医学部放射線医学教室
2東京大学医学部付属病院看護部
pp.354-360
発行日 1997年4月1日
Published Date 1997/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905319
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はじめに
近年,悪性腫瘍に罹患する患者数は増加の一途をたどり,死亡する患者数も増大してきた.これに伴い,進行がんに対する集学的がん治療,末期がんに対するターミナルケアが重要となる症例が増加している.これは,がん診断治療技術の進歩により生命予後が改善したことや,比較的早期においてがんの進展状態の把握が可能になったため,がんとの闘病期間が長期にわたることがまれではなくなったことも要因の1つと考えられる.
一方,がん医療の立場からみてもこれまではがんを治癒できるか否かが医療者の関心であったが,がんを患者の全人的問題あるいは社会的問題ととらえる視点から,がん患者のQualityof Lifeや再発がんの治療や末期がん患者におけるケアのありかたが幅広く議論されるようになり,社会科学,人文科学をも包括した学問体系が必要と考えられるようになってきた.図1に,集学的がん科学体系を示す.そういう背景を受けて,行政レベルでもホスピスケアをはじめ,緩和医療がようやく社会的認知を受け始めている.
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