連載 当世フェミニン事情—ゆれる女性たち・6
母親にかけられた呪文を解く
高畠 克子
1
1東京都精神医学総合研究所
pp.178-181
発行日 1996年2月1日
Published Date 1996/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905021
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先月は美貌も才能もスタイルもすべてに恵まれて,多くの女性の垂涎(すいぜん)の的のようなEさんの話をしたが,実はその外見の花のような太陽のような姿とは対照的に,内面は暗く傷つきやすい月のような姿を垣間見たことと思う.父親からの過大な期待に押しつぶされそうになりながらも頑張り,母親から,無視と暴力という精神的虐待と肉体的虐待を受けつづけた子ども時代.いまやっと自分の選んだささやかな生活に素顔と普段着で少しずつ歩み出している.それは小さな子どものような第一歩かもしれない.歩みは鈍いかもしれない.でもそれを見守っているボーイフレンドがいて,私も応援しつづけている.
さて今月登場するFさんは,年の頃は30歳少し前,まじめで控えめなOLである.セラピーを受けるきっかけになったのは,次のようなことだった,気分が落ち込み,仕事もなにもかもしたくない.腰が痛かったり,かぜが治らなかったりで,身体のどこかがいつも不調.3年前に脳卒中で母親を亡くしているが,母親への気持ちの整理ができなくて,いまでも始終母親に支配されているようで,窮屈で不自由.解放されて,楽しく生きたい.仕事帰りに定期的にセラピーに通うことが身体的につらいことと,金銭的な負担も考え,1か月に2回通うことに決めた.
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