特別記事
看護から見た臨床心理職の国家資格化への動き
近澤 範子
1
,
大川 貴子
1
1兵庫県立看護大学
pp.240-246
発行日 1995年3月1日
Published Date 1995/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904762
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はじめに
人口の高齢化や疾病構造の変化に伴う社会的なニーズに応じて,従来の医療体制への見直しが行なわれ,保健・医療・福祉を包括したケアシステムを構築しようとする動きが活発になってきている.そのような流れの中で,新たな専門職の国家資格化への動きが,このところ急速に浮上してきた.臨床心理職の国家資格化への要請も,その1つとして注目されている.
何らかの病を持ち,入院治療を受けている人々にかかわる看護者にとって,心のケアの難しさは日々痛感するところである.病名を告げられないまま次第に衰弱していく身体の状態に不安を抱き,がんではないかという疑念を募らせている人,あるいは事故による障害や手術などの苛酷な現実に直面し,深い喪失感にとらわれて生きる意欲を失った人,慢性疾患に罹患して,これからの人生を病とつきあいながら暮らしていかねばならないという重い現実を受け止めかねている人など,入院患者はそれぞれが手厚い心のケアを必要としている.そのような患者に接するとき,その人が体験している苦悩の重さを察すれば察するほど身がすくみ,足が遠のきがちになるという事実を,無力感や自責の念とともに打ち明ける看護者の辛い心情に,カンファレンスや勉強会を通して向き合うことがしばしばある.看護者自身が,心のケアに関する専門的な知識・技術やサポートを求めているということを痛切に感じる.
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