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はじめに
応用科学として社会にもたらした実績や,今後の高等教育のあり方の展開を視野に入れて,心理学ワールドではひとつの学問領域として心理学がたどってきた歴史と現状について再検討を求める動きが盛んになっている。その流れの中から,相互の協調と独自性を確認する場として呼びかけられた「日本心理学界協議会」という存在がある。この協議会は学術団体の集まりである点から,学問水準の定着と安定的な活用を目指して心理学教育に大枠の基準を設ける是非について議論が続いていた。加盟している心理学関連の学会は38団体を数えている。
一方,心理学関連学術団体や職能団体が個々のニーズに応じて実施しているいろいろの資格認定制度があり,ほぼ16種類がすでに制度化されていると言われている。認定心理士,教育カウンセラー,学校心理士,臨床心理士,発達臨床心理士などがその例である。しかし,同じ心理学を基礎学問としていると称しながらも,実務に反映される基礎的な素養にかなりのばらつきがある。将来的には資質の適否を問われるようなトラブルの発端となりかねない可能性を憂慮する声も囁かれていた。
心理学を標榜する職能の土台となる資質を安定させるための協議は,当然,大学でのカリキュラムによい意味で介入することでもあるために,かなり激しい議論が交わされたと聞いている。しかし,その協議はほぼまとまった。そして学問的水準を表す方法として「心理学基礎資格」の認定制度が確立されようとしている。このように,心理学ワールドは発展と安定との狭間で専門性をめぐる葛藤を経験してきたと言えるが,以下に述べる「臨床心理技術者」の資格制度を検討するに際しても重要な示唆を提供する動きでもあった。
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