特集 ジレンマと向き合う
がん患者への「告知」をめぐるジレンマ—インフォームド・コンセントの理念と現状
飯塚 京子
1
1国立がんセンター中央病院看護部
pp.901-903
発行日 1994年10月1日
Published Date 1994/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904650
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はじめに
現在,日本の医療では患者の自己決定権が行使できるようにインフォームド・コンセントの確立が叫ばれている.しかし,理想論1-2)はあってもこれまでの医師—患者関係,難解な医学用語の問題,特にがんの場合は「がん告知」という問題を抱え理想と現実の間にゆれているのが現状であろう.
当センターは,がんの専門施設であり「がん」の告知はほとんどの患者にされている.またインフォームド・コンセントについても積極的に臨床で適用しようと取り組んでいる.しかし,施設・疾患の性格上,進行がんに対する予後の説明,標準的な治療の適応がなく新抗がん剤の実験をする「臨床試験」の説明,性的機能障害を有する手術の説明など,「すべての情報を患者が理解し承諾する」という理念は,総論は賛成だが各論は非常に困難というのが実情だ.そのような臨床における看護婦の役割は多岐にわたっているが3-4),現実には無力感により,ジレンマを感じる場面も多い。今回はそのうちの何例かを事例をあげて展開していきたい.
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