連載 驚きの「介護民俗学」・8
利用者同士の理想的な関係
六車 由実
pp.72-78
発行日 2010年11月1日
Published Date 2010/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101719
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サエさんの叫び
色白でぽっちゃりとした愛らしい容姿をもち、歌の大好きな楠本サエさんは、職員たちの人気者である。ショートステイの利用者であるサエさんがやってくると、施設の雰囲気がなんとなく明るくなる。
歩行のおぼつかないサエさんを車いすに乗せて、施設内を散歩してみる。サエさんは、「あかいくつー、はーいてたー、おんなのこー」と声を張り上げて歌いつづける。事務所で仕事をしていた職員たちはその声に誘われたかのように、廊下に出てきて、「あーサエさんだ。いらっしゃい」「サエさん、こんにちは」「サエさん、今日もお元気ですね」と次々に声をかけてくれる。それまで歌いつづけていたサエさんも、にっこりとして「あーはっはっは、こんにちはー」と答える。若い女性職員たちは、「もうサエさんといるとすごく癒されるーって感じ。サエさん大好きだよ」と言って抱きしめたりする。サエさんは、「あーはっはっはー」と笑っている。
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