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はじめに
現在、EBN(Evidence based nursing)やクリニカルパスなどのパスやマニュアル、TQM(Total Quality Management:総合的品質管理)などのQC(Quality Control:品質管理)/QA(Quality Assurance:品質保証)やPDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)注1)などの品質管理手法、FISH哲学、インシデント/アクシデント・レポートなど、さまざまな手法が、医療以外の世界から医療現場にとり入れられてきています。これらのトレンドには、目の前で結果が実感できたり、失敗を避けられたり、効率化や均質化や最適化やモチベーションアップという効果があります。
しかし、効果だけではなく、看護師を志したときの想いや感性、感覚、和みや癒しの心を奪い去ったり、「あなたの代わりが存在する」「考えないで決められたとおり手を動かせ」「感情は押さえ込め」というメッセージが伝わるという副作用も含まれています。副作用を知らずにいると、良かれと思って始めたにもかかわらず、看護師の均一化、ロボット化(アンドロイド化)を進めてしまうかもしれません。アンドロイド化(笑顔を強要されることも含む)された看護師は、正確でミスは少ないかもしれませんが、「キョウハ、ドウサレマシタカ、カンジャサマ。シンサツシツニオハイリクダサイ」という印象を患者に与えるでしょう。そして、機械的に仕事をかたづける看護師がたくさんいる職場が生まれるかもしれません。そのような職場は、私の感覚では「大切な友人に勧められるようなすてきな職場」という感じではありません。
これから紹介する職場の雰囲気づくりのコツは「今の職場を大切な友人に勧められるようなすてきな職場にしたい! だけど、ひとりでがんばったところでどうせ何も変わらないし、大変なだけ……」と思っているすべての方を対象としています。したがって、今回取りあげる項目は、どれもあなた1人で始められるものばかりです。
そもそも私の仕事は「職場の体質改善」なので、本来ならばこのような対症療法的なアプローチはお勧めしません。なぜならば、「楽しく」「簡単にできて」「効果がすぐに出る」対処法ほど、本来の問題を悪化させる「逆効果の応急処置」になりがちだからです。しかし、いくら体質改善が重要とわかってはいても、現実的に職場全体が本質的な体質改善に取り組んでくれるとはかぎりません。
そこで今回は、体質改善につながる第一歩として、読者の皆様が個人的に取り組めることを紹介していきたいと思います。気になる項目から読んでも、気になる項目だけ読んでもかまいません。
取り組むコツは「急に変化しない」ことです。急な変化はリバウンドを生んでしまい、逆効果になりかねません。少しずつ、ゆっくりと始めてみてください。
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