特集 口腔乾燥症のWhy&How
口腔乾燥症患者のリハビリテーション
口腔乾燥に伴う摂食・嚥下障害
伊藤 加代子
1
,
野村 修一
2
1新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻摂食環境制御学講座摂食・嚥下障害学分野
2新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻口腔健康科学講座加齢・高齢者歯科学分野
pp.1186-1187
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100838
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生命体にとって栄養や水分を摂取することは,生きていくうえで欠かすことができない.唾液は,食物や水分の入り口である口腔内に分泌される液体であり,摂食・嚥下に重要な役割を果たしている.したがって,唾液分泌が減少すると,①咀嚼障害,②嚥下障害,③味覚障害,④義歯使用困難などを生じ,ときに重篤な摂食・嚥下障害をおこす可能性がある.本章では,口腔乾燥によっておこる摂食・嚥下障害とその対処法について述べる.
咀嚼障害
唾液の作用の1つに「潤滑作用」がある.これは,唾液蛋白(主にムチン)のはたらきによるもので,口腔の表面に水分を保つ潤滑薄膜を形成し,口腔環境を滑らかにする1).咀嚼時には,舌が複雑に運動し,口蓋や歯肉,頬粘膜と接触する.潤滑油の役割を果たす唾液が減少すると,舌の動きに対する摩擦力が亢進し,咀嚼障害を生ずる2).また,十分な潤滑薄膜が形成されないと,粘膜に食物が触れたとき,接触痛を起こすこともある.
咀嚼障害を改善するためには,まず,粘膜の保湿を図ることが大切である.オーラルウエット,オーラルバランスなどの保湿剤を継続して使用する.重度の口腔乾燥症においては,咀嚼・嚥下後に少量の水分を口に含んで口腔内の食渣を洗い流したり,お茶ゼリーを摂食したりすることも有効である.また,唾液分泌を促進する薬剤を使用したり,後に述べるリハビリテーションを行なったりすることは,摂食・嚥下障害の改善につながるといえよう.
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