特別記事 戦後60周年企画
記憶のかけら―陸軍看護婦になった母<後編>
西川 勝
1
Nishikawa Masaru
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
pp.938-941
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100200
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真珠湾攻撃の起こった年.紆余曲折を経て,18歳で南京にわたった澄は,陸軍中佐に直訴し,軍の見習い看護師となった.
わずかな娯楽を唯一の楽しみに,厳しい勤務もたくましく乗り切って,澄は一時帰国し,晴れて看護婦国家資格を取得,再び南京に舞い戻ってきた――.
自らも看護師となった息子が聴いた,1人のナースの戦時下での物語,後編です.
敗戦の1 年前――再び南京で
1944(昭和19)年5月,その春に晴れて看護婦国家試験に合格した西川 澄 は,意気揚々と南京第二陸軍病院に帰ってきた.今までは無印だった看護帽に赤十字を,看護衣には陸軍看護婦の印である星の襟章をつけてもらい,澄は誇らしい気分だった.しかし,このときすでに敗戦の1 年3 か月,看護婦らしい仕事は徐々に少なくなる状況だった.
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