特集 新生児黄疸.母と子のケア
光線療法と母乳育児のEBM
芦田 千恵美
1
1愛染橋病院
pp.197-201
発行日 2002年3月25日
Published Date 2002/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902832
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はじめに
私が第1子を出産したときのこと。生後3日目に息子は,黄疸が強く出ているとのことで光線療法を受けることになった。母子同室だったが,その間,母と子は離れなければならなかった。当時の日記に「やっとうまくいきはじめたところなのに……。やるせない話だ。母乳はだめということで,さっき搾乳して捨てた。捨てる前に飲んでみた。少し甘くて少し生臭い。正助(息子の名前)が飲むはずだったのに,と思うと切なくなった」「後で測ってみると100cc以上あった。正助のために私のからだが動きはじめている。そしてそんなからだに私の意識が少しずつ変革されていく」と私は綴っている。我が子との初めての出会い。授乳を通しての濃密な触れ合いの中で,母と子は誰に教わるともなく絆を深めていく。離れたくない,すでに母親になり始めていた私がそう思うのも無理なかった。
当時の私は助産婦でも医療関係者でもなく,専門知識を持たない一人の母親だった。母乳中断も「必要な治療」なのだからしかたがない,そう納得させて,私は我が子との分離不安と乳房の緊満痛に耐えた。
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