特集 母乳育児成功のコンセプト(上)
ユニセフとWHO共同の「10カ条勧告」を読み解く
堺 武男
1
1東北大学医学部小児科
pp.756-761
発行日 1998年9月25日
Published Date 1998/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902007
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はじめに
今回,筆者は「10カ条勧告を読み解く」というテーマをいただいた。10カ条そのものについては,幸いなことに日本全国津々浦々に行きわたっていると考えているが,その内容は必ずしも十分に実践されていないのが現状であると認識,している。
1989年にユニセフとWHOが「母乳育児成功のための10カ条」(以下,10カ条)を発表したのは,表1に示すように母乳育児を世界各国に徹底させようという努力と試みの動きの中からである。当時,先進国では人工乳が売り上げを増してきており,1968年,Lee Forrest Hillが『Journal of Pediatrics』に「ラ・レーチェ・リーグへのあいさつ」と題して1)「人工乳はきわめてシンプルで,安全で,一律にうまくいっており,もう母乳についてわずらわされることもないようだ」と発表,人工乳使用はますます拍車がかかり,先進国においては母乳育児率が20%以下にまで低下するという人類の危機とも言える状況があった。
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