連載 とらうべ
ユニセフと助産婦さん
和気 邦夫
1
1ユニセフ駐日事務所
pp.883
発行日 1995年11月25日
Published Date 1995/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901347
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僕は助産婦さんが大好きだ。こんな出だしで文章をはじめると読者にごますりをはじめたと思われてもしかたないが,わたしの助産婦とのつきあいは長かった。第二次世界大戦の真っ只中の昭和18年おやじの勤めていた東芝の工場のあった川崎で生まれた。母親の話では家でお産婆さんの手に助けられながらこの世にでてきたそうである。幸い安産でよかったが,当時のお産婆さんにどの程度の科学的知識があったかは,ちょっと気になる点である。食料不足の時代にもかかわらず,母乳でまるまると良く育ったようで,母親もそのことを誇りに思っていたそうである。
それから27年がたちユニセフにはいり,インドのニューデリーに勤務になった。当時のインドでは看護教育も整備されていない時代で,ユニセフはWHO(世界保健機関)といっしょに1年間の助産婦教育を援助していた。通常の看護教育を終ってからもう1年の助産婦コースということで,生徒にとっても大変だったと思うが,北部インドにある看護学校を見て歩き,教授陣がそろいカリキュラムがしっかりすると,ユニセフから教材や医療器具を学校にさしあげた。そして卒業生には一人ひとり,卒業証書といっしょに安全な出産をたすけるのに必要な新しい器具と衛生材料がはいっているアルミ製の持ち運びのできるケースを全員にさしあげたのを思い出す。
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