特集 マイナートラブルをとらえ直す
女性学からみた産後のデプレッション
大関 信子
pp.740-747
発行日 1994年9月25日
Published Date 1994/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901096
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はじめに
女性の産後の抑うつ状態,感情失禁,不安,思考障害,イライラ,失望感,不眠などは,紀元前4世紀頃から知られており,ヨーロッパでは漠然と産後のデプレッション(Postnatal Depression:PND)と呼ばれていました。このPNDは,医師や助産婦だけではなく,社会学,歴史学,心理学や精神分析などの分野でも研究されています。特に,社会学者や心理学者のなかでもフェミニズムを追究する学者たちが,お産やPNDについて,医学とは違った角度から研究しています。
フェミニズムとは,女性に対する差別や抑圧からの解放を目指す思想と行動です。1970年代のウィメンズ・リブが目指した,法的,社会経済的平等だけでなく,心理的な抑圧(例:女性差別やセクハラ)や性的役割(例:家事,子育て,老親の世話など)をも問題とします。女性学(Women's Studies)とは,このウィメンズ・リブの影響のもとにアメリカで始まり,男性主導であった学問研究を,女性の視点で見直そうとする学際的な研究領域です。学際(interdisciplinary)とは,複雑な問題の分析をする場合,1つの学問領域,専門分野の知識,経験だけでは不十分で,多くの異なった学問や専門知識が必要になってくるので,学問の領域を越えて研究するものです。女性学がその一例で,その研究領域は,哲学,女性社会学,女性心理学,法女性学,女性史,フェミニスト人類学など多岐にわたります。
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