特集 病院における完全母子同室
完全母子同室の理論的根拠
福田 雅文
1
1長崎大学医学部小児科
pp.933-940
発行日 1993年12月25日
Published Date 1993/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900922
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はじめに──完全母子同室を経験して
出生早期より母親と赤ちゃんを一緒にすると,母親は数日間ほとんど睡眠をとらず,ひたすら赤ちゃんを抱っこし,頻回に母乳を与える。この数日間は,女性が母親になっていくための,そして赤ちゃんが母親を自分の最も信頼できる人だと認識するための,自然から授かった,まさに「凝縮された数日間」であると思う。たった数日間でどうしてと思うほど,母親は変わっていく。
最初から赤ちゃんに慣れている母親,乳首の痛みに耐えている母親,寝不足の母親,母乳が出ないので赤ちゃんがかわいそうと訴える母親,時には赤ちゃんと一緒に涙を流しながら授乳させる母親,それぞれの母親は自分なりの方法で赤ちゃんを抱っこし,話しかけ,赤ちゃんがもっとも落ち着くための方法を模索している。そして数日がたち,母乳が出はじめると,赤ちゃんは急に穏やかに眠るようになるが,ほとんど一致して母親の表情も穏やかになり,何かをやりとげたような自信が見られる。
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