特集 新生児は主張する
新生児の超適応能力
戸苅 創
1
1名古屋市立大学医学部
pp.874-879
発行日 1991年10月25日
Published Date 1991/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900427
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はじめに
ウサギ30g,チンパンジー400g,ゴリラ500g,ヒト1,500g。脳の重量である。哺乳動物の中で,ヒトはその体に対してけた外れに大きな脳を持っている。ただし,脳の大きさだけで比較すれば,クジラが7,000g,ゾウは4,000gもあるが,その体重比はヒトと比較にならない。いうまでもなく,ヒトの場合の大頭化は進化の結果である。しかし,一方では,脳が大きくなった分だけ難産系の動物へ仲間入りすることとなった。つまり,動物界の最高峰に位置した代償として,ヒトの女性にとってはいささかつらい,産みの苦しみを味わうことになったのである。
生まれくる新生児にとっても,大頭ゆえに狭い産道を時間をかけて通過しなければならないことは決して楽しい話ではない。新生児は自衛のため,多少の酸素欠乏や虚血に対して適応できる能力を持つしか方法がなかった。これを我々は「新生児の超適応能力」と呼んでいる。すなわち,種々の超適応能力を持ち得たもののみが生き残って,現在の我々に至ったと考えるべきであろう。
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