「心地よい場」をつくる

　長い間，高等看護学校で，カウンセリングの講義を続けている関係で，時折，学生からカウンセラーになりたいという相談を受けることがある。そのようなとき，私は「カウンセラーになる前に，助産婦さんの資格をおとりになったら…」とすすめることにしている。彼女たちは一様にけげんそうに，「まさか専門外の方から助産婦という言葉が出てくるとは思わなかった」という。

　誰しも，長い人生の途上において，思いがけないさまざまな困難にぶつかることがあるだろう。たとえば，愛や信頼の喪失，自分を支えてきた心情や思想のゆらぎ，病気や経済的不安等々である。このように何を愛し，何を価値として生きるか，といった個人の内心の自由にかかわる相談の仕事は，社会的権限や権力と無縁の場にあることが何にもまして大切だと，常々私は考えてきた。