Medical Scope
先天性横隔膜ヘルニアと肺低形成をめぐる話題
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.337
発行日 1990年4月25日
Published Date 1990/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900075
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新生児医療や胎児診断手技の著しい進歩にもかかわらず,先天性横隔膜ヘルニアの症例の救命率・予後が一段と良好にならないという事実が話題になっています。先天性横隔膜ヘルニアの診断が出生直後についた症例はとくに予後が悪く,手術が行なわれても生存への道はかなりきびしいものがあります。しかし,生後数日してから診断されたものについてはかなり予後がよく,生存例も数多くなっています。この差の原因は一体どこにあるのでしょうか。
出生直後に先天性横隔膜ヘルニアの診断がつくということは,出生直後に著しい呼吸障害など,その疾患を疑わせる症状が出現しているということで,横隔膜の欠損部も大きく,胎児時代の肺低形成も非常にひどく,予後が悪いのは当然だということがわかっています。また,生後何日かして診断されるような横隔膜ヘルニアは,症状があまりひどくない,つまり横隔膜欠損部も小さく,ヘルニアとしても程度は軽く,肺もそれほど低形成ではないので,当然ながら予後もよいというわけです。このように考えてくると,先天性横隔膜ヘルニアの症例の予後を左右する大きなひとつの因子に,肺低形成の重症度があるということになります。
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