連載 いのちの詩を読む・10
母なる海を求めて(海のなかにいる母のように(部分)/高良留美子)
新井 豊美
pp.780
発行日 1988年10月25日
Published Date 1988/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207476
- 有料閲覧
- 文献概要
この世に生まれて来たすべての子供たちが、幸せに健やかに成長してほしい、それはわたしたち大人の心からの願いであり祈りなのだ。だが現実には少年少女たちの悲しい事件がくり返され、この瞬間も世界のどこかで、戦争や飢餓や貧困が子供たちの生命を奪っている。この世界の矛盾は弱者の上に常に苛酷なかたちで現れてくるが、その中でも今、最も苦しんでいるのは子供たちなのではないだろうか。
大人たち、ことに母親たちは我が子をおもい、我が子の成長に一喜一憂し、幸せな未来をひたむきに願う、その心にいつわりなどあろう筈はない。しかしそれが本当の意味で子供たちすべての幸せにつながり、その苦しみを共に苦しむことにつながっているだろうか。その反省もこめて、わたしたちはこの詩を深く読む必要があるだろう。
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.