特集 妊娠と糖尿病
糖尿病妊婦の診断と治療
村田 和平
1
,
田辺 美智子
2
1三重大学医学部産科婦人科学教室
2三重大学医学部附属病院産科
pp.826-833
発行日 1984年10月25日
Published Date 1984/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206528
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はじめに
軽症の糖代謝異常時には糖尿病に特有の口渇・多飲・多尿・全身倦怠感などの典型的な臨床症状が伴わないことが多い。しかし,軽症をふくめ糖代謝異常妊娠時には,妊娠中毒症・羊水過多症などの母体合併症,奇形・巨大児・胎児発育遅延・胎盤機能低下などの胎児合併症および低血糖症・高ビリルビン血症などの新生児合併症をひき起こす頻度が高い。これらの母児にみられる合併症の予防およびその程度を軽減するために,糖代謝異常妊婦を適切に診断し,症例に応じた治療および妊産婦管理を行なうことは,臨床上はなはだ重要である。
また最近では,糖尿病治療の進歩によって,罹病期間が長く,網膜症や腎症などを合併した妊婦が増えつつある。これらの妊婦のなかには,妊娠中に糖尿病に対する管理・治療を十分に行なっても母児における予後に問題があり,そのため状況によっては妊娠を避けるのが望ましい場合がある。以下,糖代謝異常妊婦の産科合併症,診断の問題点,治療についてふれてみる。
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