J. ジィーゲムンディンとその著『難産および異常出産に最も必要な教え』について

1．はじめに

　わが国には，ドイツの助産史，特にその歴史上に大きな役割を果たした人物，あるいは著書について詳しく記述されたものが残念ながらほとんど存在しない。

　ここに掲げるJ. ジィーゲムンディン（Justine Siegemundin）と彼女の主著『難産および異常出産に最も必要な教え』（Ein höchst und nötiger Unterricht von schweren und unrecht sthenden Geburten）についても，われわれはおそらく医師向けの産科史でわずかにその名を知る程度であろう。しかし，ドイツあるいは一部周辺ヨーロッパ諸国の助産史においては，彼女とその著書は重要な意味をもつものとして扱われている。