私と読書
各施設での看護手順作成に大いに役立つ—「産科看護手順」を読んで
井上 キミ子
1
1北海道大学医学部付属助産婦学校
pp.795
発行日 1979年11月25日
Published Date 1979/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205636
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この複雑な社会の中に新しく入り込んで来る命が,産科における看護者の影響をどのように受けているのかを考えさせられるときがある。「対象の理解」とか「患者中心の看護」とかが,盛んに論じられるようになって久しい。本質を貫いた看護がなされたならば産科における看護は,ある意味では社会の質を変えてゆくのではないかと思われる。今,看護の実際はどこまで目ざすところに近づいているのであろうか。
本書は,初版が1969年に出版され,10年後に第2版として新しい部分を加えて再版された。その初版の序の中で「……常日ごろ行っていることを文章にするということは,意外にめんどうなものであり,その必要性は感じても,手をつけているというのが実情のように思われる。私どもはそのようなことから,毎日の仕事が惰性で行われるようになり,産科に働く看護者の手不足とからんで,次第に看護が簡略化され,母子不在の看護に流れることをおそれ,それぞれの施設に応じた看護手順をつくる一つの手がかりになれば……。」とこの本をまとめた意図が述べられている。そして意図のとおり,順序を示すだけの手順でなく,文中あるいは行間に母子への心配りをにじませるという努力がなされている。看護の対象となる人たちの問題に,しっかり視点をあてているだけでなく,看護者へもどうしたら看護の本領を発揮していけるのかを,実際に即して述べている。
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