あだ花抄
疎開先浮世の彩模様
青柳 かくい
pp.437
発行日 1975年8月25日
Published Date 1975/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204911
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その頃,戦禍をまともに受けたことのない者は,疎開者に対しての同情や心やりが,まことに薄いものであった。
農繁期には子供らを集めて,無料託児所を作って,猫の手も借りたいくらい,忙しく立ち働いている親たちに重宝がられたり,親と離れて東京あたりから来ている淋しそうな疎開学童を慰めるため,紙芝居を演じてみせたり,麦わら細工の籠なども自分の幼ない頃に覚えた思い出を生かして,出来上がったら煎り豆を入れて配ってやったりの生活もした。
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