書評
—土曜会歴史部会—「日本近代看護の夜明け」
村上 信彦
pp.29
発行日 1973年10月1日
Published Date 1973/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204590
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はじめて出た正確な看護婦の歴史
明治にはじまった職業婦人のなかで,知的教養を資格としたものに女医と看護婦があげられるが,前者は性別打破のための先駆者的役割だったのにたいし,後者は純粋な女の職業として今日にいたっている。だから看護婦の歴史はきわめて重要なのに,これまでの女性史がエリート中心か,さもなければ階級史観に埋没して実証を怠ってきたために,ほとんど明らかにされていなかった。
その点で,本書の出現はまさに画期的だと言わねばならない。安易な結論をさけ,忍耐づよく資料を堀りおこし,一つ一つ史実を明らかにしてゆく。しかも記録による実証だけに甘んぜず,それを裏づけるものとして,できるかぎり生存者—90歳以上の長寿者が多い—を探し求めて足を運び,その時代に生きた人間の体験や感覚を理解し追体験しようとつとめている。それは,20年という長期にわたる共同研究の美事さと重みを感じさせるばかりでなく,研究方法の正しさと周到さをものがたっている。
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