保育所訪問
仲間を大切にする健康な子に
和田 繁子
1
1世田谷区立喜多見保育園
pp.58-59
発行日 1971年11月1日
Published Date 1971/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204256
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保健婦さんがいたら
成城学園前から屋敷町を歩いて10分余,武蔵野台地のきれたところ,昔の御用林に沿って世田谷区立喜多見保育園はあります。こう書くとしごくのんびりした土地柄のような印象さえ浮かびますが,前とうしろを道路にはさまれ,ここも車公害からのがれることはできないのです。夏になると定期便のようにやってくる光化学スモッグ警報に,子供も保母もすっかり慣れっこになってしまいました。恐ろしいことです。4年前保母として出発した頃,保育園の前を絶え間なく行きかう車の騒音が気になってしかたがなかった経験があります。しかし今ではまったく気にならないのです。
ある日の家庭訪問で「先生,この狭い道に車がひっきりなしでしょ。子供を外へ出しておいたらどうなるかと……,ここんとこ柵して出さないんです」とお母さんがいっていました。住宅地の真中にあるのですが,現在は自家営業の子供が半分近くを占めているので,どうしても降園以後こうした問題を起こしがちです。そのためでしょうか。冬になればすぐ風邪をひく,扁桃腺をはらせる,熱を出す,咳をするなどの子が多いようです。そのたびに色とりどりの薬です。「先生,これお食事のあとで飲ませてね」とおいていかれる薬のビンを見ながら,これでよいのかと考えさせられてしまいます。ガラスの小箱でぬくぬくと育った子供は,ちょっとマラソンをしようものならすぐ息切れです。子供はまず健康であることが第一条件です。保育もそのうえにたってなされなければならないのは当然のことです。
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