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「やはり斜頸ですね」,医師の声に「ああ,やっぱり」と,ガックリためいきをついてしまいました。「早いうちにマッサージをした方がなおりも早い。そう? 半年も続ければ完全に治りますよ」といわれ,「本当になおるんですね」と,思わず念をおしてしまった。
出産後を主人の実家で過ごすことになり,赤ちゃんのお風呂,おしめの洗濯,私の食事の世話と,全部おばあちゃんにしていただき,私はただ子供,2850gで生まれた割にはふっくらして,色白で,とてもかわいい赤ちゃんにおっぱいをやっていれば良いという幸せな母親でした。生後17日目頃,お風呂に入れる仕度をしている私達に,突然不幸が襲ってきた。日頃から,「この子は左の方ぼかりむいている,なるべく右の方にむけるようにしろよ」と言っていた主人が,「俺が裸にしてやる」,といい,グズグズぬがせてくれていたが,そのうち大声で「あれっ! この子,首筋にこぶがあるよ」と,どなった。余程気になっていたのでしょう。「なんでいつもこちらばかりむいているのか,首をまわしているうちに気がついたんだよ。普段,いつも一緒にいて,おっぱいをやったりお風呂へ入れたりして,どうして気がつかなかったんだ」といわれ,私とおばあちゃんは青くなってただオロオロしていました。右の首筋の私の小指位のハレモノ「きっと斜頸だよ」といわれ,気がつかなかった私は,母親失格とばかりしょんぼりしてしまった。すぐ近所の小児科へ連れて行ったところ「斜頸なんてこんなもんじゃない,きっと知らないうちにかぜをひいてりんぱ腺がはれそのままになっているんじゃないかな」といわれ,その日は帰宅したが,納得のいかないまま,不安に日を送り,1カ月目の定期検診を待ちかねた返事が,前述のとおりでした。
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