Medical scope
新生児乳児肝炎
島田 信宏
1
1国際聖母病院産科
pp.63
発行日 1971年3月1日
Published Date 1971/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204095
- 有料閲覧
- 文献概要
新生児黄疽(昔の生理的黄疸)が消失してしまってから,すなわち,生後2〜3週目から少しつつ黄色くなってくる黄疸に,新生児期の肝炎があるのは皆さんもよく知っているでしょう。この黄疸というか肝炎はいろいろに呼ばれていますが,新生児肝炎neonatal hepatitis,あるいは乳児肝炎infantile hepatitisという名称が米国の学者の間では広く使われているようです。日本でも,この慣例にならって新生児,乳児肝炎と呼ばれていることが多いのですが,この疾患の本態については大変に医学的な議論が多く,学者間での論争も有名です。そのいくつかを皆さんに分りやすく,ここに解説してみたいと思います。
この新生児乳児肝炎はどうして起こるのか,その原因についてはいろいろな説があります。まず第1に,ウイルスの感染であるとする考え方ですが,大変多くの学者に支持された説です。成人にはよくウイルスによる肝炎がありますが,この新生児乳児肝炎の肝臓における病変は,成人のウイルス性肝炎のそれに非常によく似ているので,おそらく,成人のウイルス性肝炎や血清肝炎のウイルスが,妊娠中に母体から胎盤をとおして胎児時代に胎内で感染したのであろうと考えられています。また,この事実を証明するかのように,ストークス博士は新生児乳児肝炎の血液を成人に注射したところ,肝炎を発症させたと報告しています。第2に大腸菌群などの細菌感染による肝炎だとする考え方があります。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.