婦人ジャーナル
母体をねらう農薬公害
山主 敏子
pp.57
発行日 1971年2月1日
Published Date 1971/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204076
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五体満足でかい子を生むというほど,母親にとっての悲劇はないだろう。ベトナムでは,このごろ染色体異常による奇形児が増加していると報道された。原因は米軍がジャングルを枯らすために使っている枯葉剤である。この恐るべき薬剤,2・4・Dと2・4・5-Tの混合薬は,わが国でも森林除草剤として年に1,800トン(農林省植物防疫課調べ)も使われている。そのため下北半島のサルは死滅寸前にあると案じられているが,サルばかりではない,いつ人間にベトナムと同じような災厄がふりかかってくるかわかったものではない。
枯葉剤ばかりでなく,農薬の恐怖は,しだいに身近に迫っている。このごろは人工栄養児が多いが,生命の綱の牛乳にも農薬が残留しているというし,それどころか母乳にさえBHCなどの残留農薬が含まれていたケースが,大阪,秋田につづいて東京でも発見された。これはごく一部の病院の入院患者を調査した結果だが,母たちがひとしく自分の与えている母乳も…?と,不安をもつのは当然であろう。
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