特集 今日の家族計画
家族計画と人口問題—4つの時代思想から見る
村松 稔
1
1国立公衆衛生院
pp.27-30
発行日 1970年12月1日
Published Date 1970/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204025
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Ⅰ.マルサスの人口論
組織化された運動としての家族計画は,歴史的に,また世界的にながめてみると,その時代の要請によっていくつかの段階を経てきた。
人口問題の観点から説きおこして,産児調節運動の理論的うらづけの糸口になったのが,1798年イギリス経済学者マルサスが書いた『人口論』である。人口の増加はその速さが食糧増産の率を上回り,歳月がたつにつれて人間の数と与えられる食糧との間の不均衡は大きくなり,社会,経済上の問題が生じ,いわゆる人口問題を引き起こす。この意味からいって人口増加は人類の将来に脅威となる可能性をもち,生活水準の向上を楽天的に望み信ずる考えは必ずしも当をえていない。マルサスの人口論はこのような悲観的な警告であった。
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