巻頭随想
国民の寿命と助産婦
豊川 行平
1
1東京大学衛生学
pp.9
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202672
- 有料閲覧
- 文献概要
最近の医学の進歩,公衆衛生の発達によって,わが国民の寿命は著しく延長した.かつては人生50年といわれていたのに,最近では男子66.2歳,女子71.2歳となっている.まことに喜ばしいことである.しかし,諸外国と比べると,たとえばスウェーデンでは男子71.7歳,女子75.2歳,ノルウェーでは男子71.1歳,女子74.7歳というように,わが国よりも長い平均余命の国が多い.われわれとしては,今後さらに努力を続ける必要がある.
平均余命を延長するためには死亡率を下げることであるが,とくに乳幼児の死亡はこの平均余命に大きく影響する.わが国民の寿命が著しく延長したというのは,全般的に伝染病による死亡が減少したということもさることながら,乳幼児,とくに乳児死亡率の急速な低下によっているのである.戦前は出生1,000に対し100以上の乳児死亡率を示していたのに,昭和37年度には26.5となっている.これほど急速な低下を示した国は他に例がない.乳児死亡率の大小はその国の文化水準を示す指標であるといわれているが,われわれとしては大いに誇っていいことであろう.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.