Medical Box
妊娠と歯
相馬 広明
1
1東京医科大学産婦人科教室
pp.41
発行日 1963年9月1日
Published Date 1963/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202609
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妊娠中は胎児のために母歯のカルシウム分がとられるので,そのため歯が悪くなると信じている人々はまだ沢山おりますが,本当に妊娠中歯は悪くなるのでしょうか.この疑問について考え直したいのが本日の課題です.
まず母歯からの脱カルシウムが実際に起きるかということについては簡単にいいますと,歯が生えたのちは歯の石灰化された部分には,細胞も血管もないので,ミネラルを運ぶ血液供給の路はたたれ,そのため摂取したカルシウムが母歯に影響も与えないし,母歯からの脱カルシウムも起きないということになります.だからといって母体のカルシウムの摂取が必要でないというわけではありません.何故なら胎児のカルシウムの必要量は,母体のもっているもののわずか1%にしかすぎませんし妊娠中の母歯には食餌,カルシウムビタミン、ホルモンなどの摂取は影響をあたえないとはいうものの,胎児の歯の発育には重大な影響をあたえるからです.それも胎児に歯のもとができる妊娠3か月ごろの摂取が必要であります.
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