へんしゅう・でゅえっと・3
都会のなかの"都会人"/男は嫌い女ばか
長谷川 泉
pp.43
発行日 1961年8月1日
Published Date 1961/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202181
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生理学会で京都へ行つた.ちようどタクシー・ストの際であつたので,京都の街を走つているタクシーはすくない.そうでなくても,京都は,東京や大阪のような交通麻痺の都会ではない.古くからの伝統の匂いをたたえたのんびりした街である.そこへもつてきて,走つているタクシーはすくないというわけであるから,まことにゆつたりとした雰囲気であつた.道路を横切るのに,いのちがけといつた東京の空気ではない.
京都へ行つて感じたことは,人の皮膚のつやが違うということであつた.これは,京美人の皮膚のことを言つているのではない.都会人というものの皮膚のつやのことである.東京のよどんだ毒ガスを毎日呼吸している人たちの血液は,新陳代謝不足で,十分な酸素をとり得ないから不健康などす黒い血液が,体内を循環していることであろう.これは,生理学的に,そうなのであつて,そのことは必然的に皮膚に反映し,弾力ある,健康な,みずみずしい皮膚感覚は,東京人からは得られないことになる.病的なものを,化粧でごまかしても,それは不健康の象徴のようなものである.
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