連載 妊産婦保健指導の実際・6
妊娠5カ月の指導(1)
青木 康子
1
1日赤本部産院保健指導部
pp.37-41
発行日 1961年7月1日
Published Date 1961/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202165
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◇腹帯のしめ方◇
妊娠すると腹帯を着けるという習慣は,日本古来からのもので,遠く神功皇后が三韓征伐に行かれる時,応仁天皇を妊娠中で,凱旋の地にてお産になるよう,御裳の裾に石をはさまれて,祈願されたのがその始めといわれており,岩田帯の名のある所以とも伝えられております.其の後,平安朝になつてから,妊娠5カ月の吉日を選ぶようになり,布地は主に生絹を用い,木綿を用いるようになつたのは徳川時代になつてからということです.平安朝時代の終りから鎌倉時代には,夫が着帯をする風習も生れ,宮中においても,高倉天皇が着帯をなさつたという記録があり,又"東鑑"の中には,源頼朝が妻政子の帯を結んだと記されているそうです.
このように,着帯は日本の家庭での大きな儀式の一つで,家庭分娩の多かつた戦前迄は,その風習が続けられ,盛んだつたようです.年配の助産婦さんは,昔の思い出話として,大安吉日の戍の日には,妊婦の家によばれ,三方にのせられた五色の帯や,紅白の帯を巻いたこと,着帯がすんでからは,仲人や妊婦の実家の人々と共に祝膳を囲み,お祝いをしたことなどを話されます.現在ではそのような大袈裟なことを行うことは少なくなりましたが,それでもまだ,お産の守り神といわれる神社のお守りを戴いてきたり,腹帯に祝いの言葉や,印をつけたりすることは盛んのようです.
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