妄語
就職率100%のかげに
遠
pp.12
発行日 1961年2月1日
Published Date 1961/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202068
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土佐市家俊の助産婦山中小梅さん(70)が高知新聞主催の,世のため,人のため,陰の力となつて黙々として働らいている「善意の人」に選ばれて表彰されたニュースはもういささか旧聞に近く,大谷シヨウさんが黄綬褒章を受けた頃に届いたものだつた.また76年間に数万人も世話をしたということで「日本一長い産婆さん」として羽島ライオンズクラブから表彰された丹羽いのさん(91)のことも同じ頃の朗報であつた.こうした地方の篤実徳行の人に助産婦が選ばれることは非常に多い.この事自体は,彼女らの立派な職業意識と業績とを証拠づけると同時に,また助産婦が非常な高齢のままなお日々に助産に従事しているという事実を教えている訳である.凡らく女性の仕事としては最も高年代に及ぶものといえる訳で,無医村や僻地での目にみえない努力は母子衛生を実に地道に支えているといえる.
それにしても,この御老人たちに続いて,一種の年代的空白がやつて来るのではないかという危惧,この危惧への対策は目睫の急といえないであろうか.
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