産科こぼればなし
ラジオ放送より実演の方がよいという話
pp.9
発行日 1961年1月1日
Published Date 1961/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202050
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某大学病院の産科の分娩当直は医師が3名おり,一番新米がネーベン,医局生活1年以上がミッテ,4年以上がオーベンといつて,常時その様なシステムで詰めている.当直室は畳の間で,出入口に近い方から,ネーベン,ミッテ,オーベンと年期の入つた順に寝る事になつており,従つて産婦御来院のときに助産婦が報告に来るが,出入口で話すため一番近い所にいるネーベン先生に達する声が距離の2乗に反比例する定理で、一番大きい.次にミッテ,そしてオーベンに達するころは優にやさしい声に緩和されて聞えて来る.この御来院の報告が,助産婦毎に個性があつて,その才能から,くせ,長所短所までよく判り,寝ながら聞いていても中々味のあるものだ.
ところが時代の進化と共にこの当直室にも機械文明の訪れがあり,インターフォンという便利なものが入れられた.従つて勤務室にいながらスイッチを入れると当直室と話が出来る様になつた.一見便利になつた様だが,これが又,放送した事のない素人が,早口に喋るだけ喋つてプツンと切られたときは,何を言つているんだかさつぱり判らない.やむなくブザーを押して聞返すことになるが,要領よくゆつくり,はつきり,やさしく話して呉れれば良いのだが,まるでつんぼに話している様な気になつて,やたらに声を張上げて荒々しい声でがんがんどなるのでますます判らない.
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