随筆
助産婦についていろいろ思いめぐらすこと
竹内 繁喜
1
1都立築地産院
pp.38-40
発行日 1960年4月1日
Published Date 1960/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201892
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1.助産婦教育のあり方
近頃何処の助産婦学校でも学生が集らなくて困つているようである.そんなら助産婦の売れ行きが悪いかというと,逆に,引く手あまた,羽根がはえて飛ぶように売れている.この原因については当事者からしばしば誌上で説明されているからここでは触れない.ただ気にかかるのは,助産婦教育の引き下げ運動である.すなわち,現在の教育制度による助産婦は数は少ないし,給料は高いしで,一般開業医はとても雇えない.したがつて,も少し教育程度を下げて,安い給料で,町の開業医が楽に使えるような助産婦を養成する学校を作つたらどうかという意見がある.
いう迄もなく,日本の助産婦教育は世界でも最高水準のもので,欧州の先進国に決してひけをとらない.むしろ,英国,独逸等より遙かに高度のもので,米国の助産看護婦教育と匹敵するものである.独逸等も日本の例を見て,助産婦教育を上げようという動きを見せている現在,せつかく引き上げた日本の助産婦教育を何も引き下げる必要は認めない.応募者が少ない少ないといい乍ら日本でも助産婦学校数は年毎に殖えている.今少しこの儘静観するのが妥当だと思う.せつぱつまつた場合に,暫定的に,2本立てで,程度の低いものを別に作つても遅くはないのではなかろうか?もちろんその場合でも現行制度の学校は残しておく.
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