ローカルニユース
奇特な助産婦・佐々木さん
pp.31
発行日 1959年5月1日
Published Date 1959/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201680
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貧困家庭の"お産"に10年間も無料で奉仕している奇特な産婆さんが話題になつている.
この産婆さんは札幌市内3の15,佐々木房江さんで,主人の義雄さんは旭鉄局に勤める鉄道員.24年に旭川に移住したが,房江さんの目に最初に映つたのは宮前のサムライ部落だつた.商売柄"あそこのおかあさんたちはどのようにしてお産をしているのだろう"とさつそく足を入れてみた.すると案のじよう,日日の生活にこと欠くだけに妊婦の保健,衛生は想像以上に悪い.しかし一度足を踏み入れたあとだけに見捨てるにしのびず,金銭問題は抜きにしてめんどうを見ることにした.そのうちに出向かなくても日が迫つてくると迎えにくるようになつた.雨の日もふぶきの日も,房江さんは無償の奉仕に出かけた.自分がいかなければ生まれる赤ちやんはしろうとの手,しかも不衛生な手によつて処置されるのだろう.それでは生まれてくる赤ちやんにも母体にも危険だ.こう考えると房江さんは昼夜を問わず"黒いかばん"に手を伸ばした.
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