講座
薬の話(2)—心臓の薬
太田 怜
1
1東大田坂内科
pp.28-33
発行日 1956年4月1日
Published Date 1956/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201036
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心臓弁膜症は心臓病の中でも代表的なものであり,就中,僧帽弁膜症は男よりも特に女性に多い疾患である.しかもそれが心不全状態に陥入るのは多く結婚,妊娠そして分娩を契機とするので,心不全は助産婦の職業には関係深いものと見なければならない.又,所謂,妊娠腎の時にも高血圧や急性肺水腫は屡々見られるところであり,直接,心臓病とは云えなくとも妊娠脚気等の際には心悸亢進,息切れ,或は衝心の如く,心臓病の徴候の見られる場合が屡々であるので,心臓の薬について一応の知識を持つておくことは極めて必要であり又重要なことと思われる.
心臓の薬と云えば一般には強心剤のことであるが,それには大略2種類ある.一つは,ヂキタリスやストロファンチンの如く心筋に直接作用するものと,一つは安ナカやビタカンフアーの如く脳中枢や頸動脈球に作用して,間接に心臓を賦活する薬とである.エフエドリンやアドレナリン等は,本来は血管剤であつて強心剤の範囲には入れるべきではないと思われるが,急性心不全,そしてシヨツクの際には何よりも必要な薬である.その他に冠状血管に作用する薬としては,アミノフイリン,アミールニトリツト等があり,心臓の調律を正常化する薬としては,キニジンや,プロカインアミド等が挙げられる.これらは強心剤とは云えないが,心臓の薬であることには間違いない.
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