講座
乳癌の話〔1〕
瀨木 三雄
1
1東北大学
pp.6-12
発行日 1956年1月1日
Published Date 1956/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200977
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1.はしがき
この書物の読者の方々は,子宮癌については,さまざまの話を聞いておられ,知つておられる事と思います.助産婦の方々は,産婦人科医師の人々と,いろんな機会にあつておられ,「助産」には直接関係のない子宮癌のことも,その折々に聞いておられることと考えられます.日本の国で1年に8千人もなくなる子宮癌は,女子の生涯の大敵であります.さまざまな死亡原因のうち,女子だけが死亡する原因のうち,最もぎせい者の多いのは子宮癌です.2番目に多いのは妊産婦死亡です.この妊産婦だけしかかからない病気—前置胎盤,妊娠中毒症,産褥熱,子宮外妊娠,分娩後出血などの一連の病気のため昭和29年1年間で3,240人の母が亡くなりました.第3番目の女子特有の病気は乳癌です.もつとも乳癌は男もかかる事がありますから厳密にいえば女子特有の病気とはいえませんが,しかし,この病気にかかるものの殆んど全部は女子であり,男は全く例外的ですから,まず女の病気といつて宜しいでしよう.
乳癌では,昭和27年1,446人の女子が死亡し,他に男の死亡が35人ありました.昭和22年には,女の死亡1,192人でしたから,近頃増しているように思われます.乳癌は早く発見し,手術することが必要です.このことは子宮癌と全く同じです.しかし,乳癌の場合は,子宮癌のように出血がありません.
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