講座
抗生物質とは何か
大竹 喜彦
1
1東京大学物療内科
pp.17-19
発行日 1954年6月1日
Published Date 1954/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200615
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戰爭中から戰後にかけての医学の進歩は実にすばらしいもので,我々はその進歩について行くことさえなかなか困難であるという状態です.この進歩の中で最も注目すべきものは何といつても「抗生物質」の出現であるといつても過言ではないでしよう.抗生物質という名は一般の人にはそれ程耳なれた言葉ではないとしても,ペニシリンといえば小学校の兒童でさえよく知つているくらいそれだけ広く行きわたつており,それだけ多くの人がその恩惠を受けているわけでもあります.この抗生物質といわれるものの中にはペニシリンのほかにストレプトマイシン,オーレオマイシン(クロールテトラサイクリン)*テラマイシン(オキシテトラサイクリン)*クロロマイセチン(クロラムフェニコール)*等があることはすでによく知られているところですが,これらの薬剤が抗生物質といわれるわけは,その発見されるにいたつた歴史と密接に関係していますので簡単に述べてみましよう.1928年Flemingが葡萄球菌の純培養したものについて,菌の集落を観察している際,蓋を取つたまま放置されていたシャーレに発育した青黴の集落附近では葡萄球菌集落が溶解しつつあるのを発見いたしました.尚彼はこの青黴を純培養した培養液は萄葡球菌の発育を疎止することを確めました.そしてこの青黴(Penicillium notatum)の産出せる抗菌性物質がペニシリンと名づけられたわけです.
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