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お産の歴史(1)
地引 喜太郞
pp.63-64
発行日 1954年2月1日
Published Date 1954/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200554
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わが國に於けるお産の沿革
イ.太古
お産の風俗は国により,また,人種民族に依つて,各々異なることは,しばしば記されているが,お産は清い胎兒が,母の体内から生れ出ずるものであるとはいいながら,長い間体内に滯つている血や,羊水のために,胎兒が不潔になつていること.第2には母もそれ等の羊水や血液が一時に排泄して,お産の時には隨分と汚れるので,それを清淨なものとするために,身二つとなれば直ちに嬰兒を洗い,また母親も身を清めて,一切の汚れを去ることは,何れの民族に於いても一致しているのである.
お産の際におけるこの清潔施行は,極めて古時代からあつたもので,この清潔思想は先天性といつても過言ではないと思う.これをたとえていうならば,ちようど胎児ば,泥か何かで汚れている玉のようなものであるから,何人もこれを洗うことを忘れなかつたのである.
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