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門松
長谷川 紅蓉
pp.4
発行日 1954年1月1日
Published Date 1954/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200513
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門松といえば,すぐにお正月を連想される程私共のお正月にはなくてはならないものの一つでございます.惠方にあたる山の松を切りとつて,部落,部落へお正月の御精靈を御返したといわれる大昔から,門毎に松や竹を飾つて新春をことほぐようになつた現今まで,門松のあり方はいろいろとその時代に則した変遷をして参りました.建築樣式のだんだんと変つて参ります折から,各自の近代感覚を生かして,その家々に適当した飾り方をなさるのもよろしいかと思われます.
一樣に松,竹,しめかざりで飾られた表通りの町等では売出しのポスターと共に歳末から新年へかけてこの風物詩的な町のアクセサリーにも,なくてはならないものかもしれません.けれど,住宅街の門柱等に,それこそ風情も何もない姿の惡い松の枝先が申しわけのように一本打つけてあるのをよく見受けますが,あれでは何の意味もなさず,底に流れている意味の含まれていない表皮的なしきたりだけに隨してしまい,壽ほいでいる筈のものが,街の美観をそこね,かえつて見苦しいとさえ感じられるものでございます.その意味で一つの試作を写眞にとつて見ました.
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