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今月の花
長谷川 紅蓉
pp.48
発行日 1953年12月1日
Published Date 1953/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200507
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写眞でもおわかりと存じますが白いカーネーシヨンの塊の他は全部ドライフラワー的な乾燥させたもので必要に応じて部分的に着色して明暗を出しましたものばかりでございます.用いてありますものは藤づるの皮をむきましたものを主材に,枯らして芯だけにしましたアスパラガス,こげ茶色に立枯れた蓮の色と葉,それに枯らしてつやの失せた少し粉つぽい様に変じてきた葉蘭と硬い細いアブライトの葉等総べてが永い間心にかけて程よく枯らしたものばかり,生きた色と致しましては前記のものに囲まれている白いカーネーシヨンだけでございますが,此の爲,返つて相互の美が極端にまで強調されいけばなでなければ表現する事のできないとまでいえる不思議な力強い魅惑を出す事ができました.
総てが割合い淡い色彩のものなので引しめる爲に朝鮮出来の薬味入れの焦茶色の壼を容器に用いました.これは花器としてよりもその器の持つ独特な形状が面白いままこれをいけ花の一つのオブジエとして使いましたが,勿論カーネーシヨンはこの壼の一つにいけてありましてその光る様な白い花と光沢のある焦茶色の器のかもし出すハーモニーは淡い乾いた全体の色調の中の生きた色の中心となつて作品をピンと張り切つたものに致しました.葉蘭は葉を縦にさいて変化を出し力の強弱をつける爲に部分的に画の具で彩色してみました等,今までとは違った角度からいけたものの試作で御座います.
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