講座
鉗子分娩
奏 清三郞
1
1東京医大
pp.12-15
発行日 1953年10月1日
Published Date 1953/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200451
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1 まえがき
案ずるより生むが易しというごとく,分娩は多くは心配している程のことがなく,たとえ狹骨盤でも案外安産する場合が多い,しかし時には必らず安産するであろうと思つた分娩がなかなかに進行せず産婦は次第に続発性微弱陣痛となり,助産婦も疲労睡魔におそわれ,産婦,家族の者と共に早く分娩終了を熱望している時,醫師の来診,鉗子手術によつて無事に分娩終了した時の皆の喜びと安堵は何にたとえようもないものであろう.
すなわちかゝる場合鉗子手術はまことに有難いものであるが,適応をあやまり要約を無視して乱用する時には思わぬ人工難産をきたし,兒の損傷死亡をきたすばかりではなく,母体産道に大裂傷をおこして母体生命を脅し,或は膀胱膣瘻を残して長く母体を苦しむることのあるのは,今日までの報告においてきほど稀ではない.鉗子手術は主として醫師の行うものであるが,助産婦もその協力者乃至その適応症早期発見者として適応症,前後処置,及び副作用等を熟知して,分娩介助を完全なものにするよう絶えざる注意と熱意とが必要であると思う.
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