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お産の習俗
九嶋 勝司
1
,
K
1福島醫大
pp.40-42
発行日 1952年2月1日
Published Date 1952/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200040
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お産の習俗と言つても,助産婦が普及した今日においては,そのほとんどが歴史的なものになつて了いました。
例えば,坐産は大正の初めまでは大部分の産婦が之を行つており,病醫院及び正規の助産婦の下でするお産だけが現在の臥産であつたのです。東北のような所でさえ,東京大震災の頃を境として,坐産は次第に影をひそめ,僅かに助産婦もいないような土地に數年前まで認められようになつてしまいました。東北に行われた坐産は,陣痛が強くなると敷布團を2枚ほど巻いて紐で縛つたものを前に置き産婦は膝を折つて坐り,之に倚りかかつていきむと言う風なのが一番多かつたようであります。したがつて會陰保護などもちろん行われず,大部分の産婦に會陰裂傷が生じがちでした。又一度び弛緩出血が起れば,出血がはなはだしく,そのため死亡するものも稀ではなかつたようです。坐産の場合がそうであるように,民間ではお産は腹壓で出すのだと言う考えが強く,分娩が長引けば産婦を立たして,物に掴まらせつついきますと言う風なこともあつたと言われています。
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