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はじめに
サルコペニアは摂食嚥下障害の独立した危険因子であることが地域在住高齢者において1,2),また経口摂取が制限されている入院患者において3)報告されている.そしてサルコペニアを合併した摂食嚥下障害患者の予後は不良である4)ことが報告されている.一方で,摂食嚥下障害もまたサルコペニアの独立した危険因子であり,摂食嚥下障害と急性市中肺炎を有する地域在住高齢者におけるサルコペニアの有病率は29.4%であった5)と報告されている.
サルコペニアによる筋量減少,筋力低下が嚥下機能を低下させ,食事摂取量の減少や誤嚥性肺炎による侵襲から低栄養を招き,低栄養がさらにサルコペニアを進行させるという負のスパイラルが生じてしまうことが容易に想像できる.
サルコペニアは骨格筋量の減少,筋力の低下,身体機能の低下を呈する疾患である.嚥下に関連する筋肉は横紋筋であるものの,サルコペニアを論じるうえで四肢骨格筋とは別の特性を持つことを認識する必要がある6).
オトガイ舌骨筋は加齢とともに筋量が減少することが数多く報告されている.発生学的には第3鰓弓由来であり呼吸に同期した周期的活動をしていないため,四肢の骨格筋同様に低栄養や低活動になれば廃用に陥ることが考えられる.一方で,咽頭筋および内喉頭筋は発生学的には第4鰓弓由来の横紋筋であり,安静時にも呼吸中枢からの制御を受け,呼吸に連動した活動を示すことが報告されている7).また,その他多くの舌骨上下筋群および咽喉頭筋群も常に呼吸中枢からの入力刺激を受け,横隔膜と同期した周期的筋活動を行っているため,廃用性の筋萎縮を生じにくいと考えられている.
しかし,嚥下筋が廃用に陥りにくいとしても低栄養があれば筋萎縮を生じることは避けられず,誤嚥性肺炎では舌や横隔膜で筋分解が亢進し,筋萎縮が生じるという基礎研究8)や,呼吸筋,全身の骨格筋,嚥下筋の筋萎縮が生じる9)ことが報告されている.
本稿では,サルコペニアの嚥下障害の局所病態について嚥下関連筋ごとに最近の報告をまとめる.
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