Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「カランコエの花」—<LGBT>に向き合い,考え,議論するための映像テキスト
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.887
発行日 2018年9月10日
Published Date 2018/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201428
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「カランコエの花」(監督/中川駿)はLGBTに材を採った39分の劇映画.尺数からして筆者は学校やホールにおける補助教材,啓発素材といった役割を担う教育映画なのだろうと想像した.すなわち意表を突くとか,予想を裏切るといったことを期待すべきではないという思いをもって正対したのだ.ところが,である.鑑賞後の筆者には,凄いものを見せられたという感触が残った.凄さの正体は言語化できない.いや,むしろ安易に言語化すべきではない.胸に沁みるものは,沁みるものとしてそのまま受け止めるのもよい.
話は飛ぶが,文部科学省は「特別の教科 道徳」の新設に当たって,(おそらく徳目主義ではなく)「答えが一つではない課題に子供たちが道徳的に向き合い,考え,議論する」ものとしてその性格を説明している.そうであるなら,本作は鑑賞者側に考えさせるというスタンスを貫いている点で「道徳」のテキストにさえなりうる.
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