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はじめに
パーキンソン病(Parkinson's disease;PD)の主たる病態は,黒質線条体ドパミン神経系の進行性変性であり,振戦・固縮・無動・姿勢反射障害が四徴とされる.レボドパを用いた投薬加療が内科治療の柱であるが,長期投与による薬物誘発性ジスキネジアやwearing off現象(レボドパの薬効が短時間で消失すること)などが問題である.ドパミンアゴニストをはじめとするさまざまな薬剤の有効性も示されているが,病状の進行を食い止めるのは難しい1).脳深部刺激術に代表される定位脳手術が外科治療として確立されており,off時の底上げ効果(最も悪い状態の改善)やレボドパ内服量の減量が認められる2,3).
PDに対する再生医療を振り返ると,欧米で行われていた胎児中脳由来ドパミン神経細胞移植については,2つの二重盲検により,有意な治療効果を示すことができず,現在広く行われる治療という位置づけではない4,5).しかしながら,欧州連合(EU)が資金提供した多施設臨床研究であるTRANSEUROスタディの結果は大いに興味がもたれるところである6).TRANSEUROスタディは,胎児中脳由来ドパミン神経細胞移植の最も新しい大規模臨床研究である.治療効果を高め,移植片に起因するジスキネジアを最小限にするため,かなり厳密にプロトコールが作成されている(表1).
グリア細胞由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor;GDNF)の脳内持続投与も臨床研究において,GDNFに対する抗体が患者から検出されたことや,運動機能の有意な改善につながらなかった7)ことからPDの主たる治療にはなっていない.一方,昨今の分子生物学の発達と人工多能性幹(induced pluripotent stem;iPS)細胞に関する新しい知見8,9)から,細胞移植や遺伝子治療もPDに対する新しい治療として期待されている.本稿ではまず,われわれの行っているPDに対する再生医療に関連した基礎研究を紹介する.次いで,PDに対する再生医療の概要,特に細胞移植と遺伝子治療について解説し,乗り越えるべき課題について少し触れる.最後に,リハビリテーションが再生医療にどのような影響を与えるかについて考察し,今後を展望する.
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