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はじめに
後期高齢者人口,独居高齢者が増えており,要支援・要介護者も,今後,ますます増加していくことが予想されている.かつての近隣社会では,独居高齢者や見守りが必要な高齢者など,なんらかの援助が必要な高齢者(以下,「要援助高齢者」)を支える仕組みが備わっていた.しかし,地域コミュニティの希薄化が進み,「健やかな長寿社会」の脆弱化が大きな社会問題になっている.このようななかで,健康寿命の延伸を目的に健康日本21が実施され,さらには要介護状態に陥ることを予防する目的として,介護予防事業が展開されている.こうしたサービスの多くは,あらかじめ策定された計画に基づき,行政や専門家ら主導によるトップダウンで提供されるのが一般的である.
介護予防事業は高齢者の生きがい形成を目的としているが,トップダウンのサービス提供では,高齢社会における人々が望む健康長寿には到達されにくいと芳賀は指摘する1).また,「要援助高齢者」は,保険制度で提供されている医療サービス・介護サービスではカバーされにくく,閉じこもる傾向があり,社会活動が狭小化して要介護状態に陥る危険性が高いことを渡辺らは報告している2).さらに「要援助高齢者」は,災害時においても一連の行動をとるのに支援を要する「災害時要援護者」に陥りやすいことが指摘されており,そのためには日常から,近隣住民らによる「要援助高齢者」への見守り活動を行うことがきわめて重要であると生田は報告している3).「要援助高齢者」を支援するには,住み慣れた地域コミュニティにおいて近隣住民らによる見守りを行い,住民が気軽に集まり交流する場を設けるなど,要援助高齢者が健康で生きがいをもって社会参加できるよう,近隣資源を構築する仕組みが必要となる.そこで地元民間非営利組織NPO(non profit organization),自治会,大学,行政らには,連携しながら,今ある近隣資産を生かしたきめ細やかなサポートと,安心のある地域に再生する活動が求められる.
われわれ理学療法士は,国土交通省の地域再生推進事業に参画し,地域再生に取り組んできた.今回,その活動内容と現状課題について報告する.
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