巻頭言
難治性神経疾患と転倒・骨折
安藤 一也
1
1国立武蔵療養所神経センター
pp.563
発行日 1986年8月10日
Published Date 1986/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105639
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最近では難治性の神経疾患にもリハビリテーションサービスがかなり普及し,運動能力障害やADL能力の維持やQuality of lifeの向上保持に努力されている.しかし,こうした患者が家庭のみならず,病棟や訓練室でも転倒し,外傷や骨折をおこすことが少なからず経験される.慢性進行性の神経筋疾患では骨折をおこすと筋萎縮や関節拘縮が急速に進行し,障害度が増強されて,以後のリハビリテーションアプローチはかなりレベルダウンせざるをえなくなる.
パーキンソン病に対しては現在,薬物療法が飛躍的に進歩し,運動障害の改善をみるものが多いが,長期治療を行っていると,治療開始数年後からその効果が減退し,半数例では障害度が再び強くなる傾向がある.とくに姿勢反応障害に対する効果がうすれて転倒しやすくなり,骨折を生ずることも少なくない.また,ADLに大半介助を要したものがレボドバ療法でほとんど障害のない状態にまで改善しながら遠方へ旅行に出かけ転倒して大腿骨骨折をおこし,以後の回復が悪くて再び大半介助を要する状態を続けている例もある.
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